会長ごあいさつ
第63回日本心身医学会近畿地方会/第50回近畿地区講習会 会長 清水 良輔(皮ふ科しみずクリニック) |
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この度、「近未来の心身医学への挑戦」をテーマとして、第63回心身医学会近畿地方会および第50回近畿地区講習会を開催させていただくこととなりました。
挑戦の内容は、「ナチュラルトランス」「慢性疾患のグループ治療」「生物学的製剤の心身医療に与える影響」の3つであり今日私が辿り着いた目標であります。私が皮膚科の身体医療に心理療法の必要性を感じるようになったのは症例に導かれてのことです。大学病院時代はアレルギー外来を担当していましたが、アレルゲン対策で食物アレルギー、接触性皮膚炎,薬疹などの患者さんはどんどん良くなり外来を去っていかれるのに対し、アトピー性皮膚炎の患者さんだけが残っていくという現実と直面し、ステロイドによる対症療法ばかりの診療に不全感を抱くようになりました。心理療法を学ぼうと決心したのは大学病院を辞め関連病院に勤務した40歳を超えてからの事でした。日本心身医学会に入会したもののすぐには何をしてよいかも分からず、ともかく片っ端から高名な心理療法家の講演を聴いてまわりました。その中で最もフィットしたのがブリーフセラピーで、以来技法本を片っ端から読み漁り、読んだら使うを繰り返しながら、心理療法を知らなかった頃には考えられなかった数多くの治療効果を経験しました。約25年が経過し今思うことは、何かの技法を意識しなくても難治の疾患が以前よりはるかに良くなると感じているということです。この事はおそらく当院スタッフをも含めた一つの治療システムで長年ブリーフセラピーを実践しているうちに、リフレーミングや外在化の会話、逆説的介入などを意識せずに組み入れた解決志向面接が日常となり、技法を意識しない会話がナチュラルトランスを導入しやすくなっている結果だと考えました。しかしながら、心理療法を応用した治療は時間がかかるので、多くの患者さんを診察しなければならない開業医にとって効率的なグループ治療は是非とも実践したいテーマです。また近年の生物学的製剤の登場で、各種疾患の臨床現場には大きな変化が起こっていますが、そのことに伴って心身医療にも変化が起こっていると考えています。
そこで今回は有明メンタルクリニック院長、中島央先生に「日常臨床で起こっているトランス」というタイトルでご講演いただき、京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学講座教授、加藤則人先生には「アトピー性皮膚炎の診療と心身医学」というランチョンセミナーの中で生物学的製剤に関しても触れていただきます。また、コラボレイティヴシンポジウムと銘打ってアトピー性皮膚炎のグループ治療としての可能性を探る目的で、NPO法人「アトピーを良くしたい」の横井謙太郎代表理事、紗羅鍼灸院黒川恵子院長、神戸松陰女子学院大学人間科学部心理学科、木場律志講師に御自身のアトピー体験をトークライヴしていただきます。また、地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪はびきの医療センター皮膚科主任部長、片岡葉子部長と大会長でもある私は、皮膚科医としてのアトピー性皮膚炎の治療経験を語ります。そして、駒澤大学文学部心理学科の八巻秀教授には座長としてグループ治療の可能性を探るべくこの場を仕切っていただこうと考えております。
トランスは各科共通のテーマとして受け入れていただけるものと思いますし、またランチョンセミナーもシンポジウムも題材こそ皮膚疾患ですが、生物製剤や慢性疾患に対する治療戦略として着目すると各科の先生方にも興味を持って参加していただけると確信しております。
皆様からの積極的なご応募を期待しております。